厚着モデルの数式を含めた

説明です。


アレルギーに関する表示: 数式
頭痛、吐き気などを催すことがありますので、数式嫌いの人は読まないでください。


ブログ本体「温暖化の気持ち」で、厚着モデルを取り上げました。


モデルとは何か (5) 厚着モデル(上)
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-97.html


厚着モデル、というのは私が勝手にそう呼んでいるだけで、要は温室効果のモデルで大気の層が複数あるいわゆる多層モデルです。


文章で説明しているのですが、さすがに数式なしでは心許ない。こちらで補遺として数式入りで解いておきます。


次のシステムを考えます。太陽からの放射が地表に入射します。途中の大気は太陽放射に対して完全に透明。地表は、大気放射と、後から述べる大気からの赤外線放射を受けて加熱され、それを全て赤外線として放射します。


大気は複数の層があります。それぞれ、(存在すれば)上の大気層からの赤外線放射と、下の大気層、もしくは地表に接している層であれば地表からの赤外線放射を受けて全て吸収し、一方で上下に同量の赤外線を放って熱を失っています。


三層の場合の概念図を書きました。「温暖化の気持ち」で使うため、数値が入ってしまっていますが、まあ、参考と言うことで。

さて、系は定常だとします。つまり、各要素に入ってくる熱と出て行く熱は釣り合っている。


以上の仮定をふまえて、方程式を立てていきます。


まず、最初に大気の層に名前をつけていきましょう。地表に接している層を第一層、以下、上に向かって順に 2, 3, と。全部で n 層あるとします。つまり、最上層が第 n 層。


太陽からやってくる単位面積あたりの熱量を  F_s、雲などによるアルベド A とします。地表が受け取る熱は (1-A)F_s となります。


一方、地面は黒体だとして熱を発します。その発する熱を F_{g} としましょう *1


地表の熱の出入りが釣り合っているので、


(1-A)F_s+F_1=F_g (1)


これが地表の満たす式。


次に、大気層を考えます。地表から i 番目の層、つまり、第 i 層を考えましょう。第 i 層は、下の層 i-1 と上の層 i+1 から熱をもらいます。第 i 層が上、もしくは下に放つ熱を F_i とすると、


F_{i-1}+F_{i+1}=2F_i (2)


ただし、これは第 1 層と第 n 層には当てはまりません。第一層は下に大気層ではなく地表があるので、


F_{g}+F_{2}=2F_1 (3)


となりますし、第 n 層は上が宇宙空間になるため熱が入ってこないので、


F_{n-1}=2F_{n} (4)


となります。


あと、何か忘れていないかな…。あ、そうそう。地表も大気も黒体だとしましょう。すると、温度が得られます。地表の温度 T_g を得たいと思えば、F_{g}=\sigma T_g^4 から求められます。第 i 層の温度も同様、F_i=\sigma T_i^4 で求まります。


数式を解く


数式を解くのが得意な人は、じゃんじゃん解いてください。ここでは私のやり方で、できるだけ数式が何を意味しているのかを考えながら解いていきます。


まず、第 i 層の式 (2) を変形すると、


F_{i-1}-F_{i}=F_{i}-F_{i+1} (5)


であることがわかります。これは何を意味しているのか。i-1 層と i 層の境を考えてください。上向きに F_{i-1} の、下向きに F_{i} の熱が動きます。式の左辺 F_{i-1}-F_{i}i-1 i 間における正味の上向きの熱の流れ。式 (5) は、これが、i i+1 間の正味上向きの熱の流れに等しいということを意味しています。


つまり、正味上向きの熱の流れはどの層の境においても等しい。この値を、\cal Fとしましょう。すると、i = 2 \sim n において、


F_{i-1}-F_{i}={\cal F} (6)


であることがわかります。あ、これ、等差数列ですね!また、n 層の式 (4) を考えると、F_{n-1}-F_{n}=F_{n} であることから、


F_{n}={\cal F}


であることがわかります。つまり、各層間を上向きに通る正味の熱エネルギーがそのまま宇宙に出て行く。


これ、考えてみたら当たり前のことで、そうでないとどこかに熱がたまったり減っていったりするわけです。


じゃあ、\cal F はどうやって求めればいいのか。地表面を表す式 (1) を変形すると、(1-A)F_{s}=F_{g}-F_{1} ですが、ここで第 1 層について、i=1 を式 (3) に入れて、式 (6) もあわせて考えると、


F_{g}-F_{1}=F_{1}-F_{2}={\cal F}


であるので、結局


{\cal F}=(1-A)F_s


と書けるわけです。つまり、各層を上向きに通過していく正味の熱量は、太陽から地表に降り注ぐ熱量に等しい。ま、これも当然といえば当然ですね。i 層と i-1 層の間を考えてみましょう。太陽のからの熱はこの境界を上から下に通過していく。大気間の熱放射は正味ではこの境界を下から上に通過していく。その両者が等しい、とこういっているわけです。つまり、境界の下側で熱の増減は無い。


さて、式を解いてしまいましょう。式 (6) から、F_{n}={\cal F}F_{n-1}=2{\cal F}、てな具合に計算できます。結局、全ての i において、


F_{i}=(n-i+1){\cal F}


となるわけですね。また、地表から第一層への熱の流れは、


F_{g}=F_{1}+{\cal F}=(n+1){\cal F}=(n+1)(1-A)F_{s}


となります。


最後に、温度を考えてみましょう。地表、大気とも黒体と考えます。つまり、F_{g}=\sigma T_{g}^4 および、F_{i}=\sigma T_{i}^4 となります。温度は、


T_{g}=\{(n+1)(1-A)F_{s}/\sigma\}^{1/4}
T_{i}=\{(n+1-i)(1-A)F_{s}/\sigma\}^{1/4}


わかること。i が大きくなればなるほど、つまり、地表から離れれば離れるほど、温度が下がること。n が増えるほど、つまり層数が増えるほど、地表の温度が高くなること。


数値を入れて計算したい人のために、大まかな値を書いておきます。


F_s=342 \mbox{[W m$^{-2}$}]
A=0.3
\sigma=5.67\times 10^{-8} \mbox{[W m$^{-2}$ K$^{-4}$}]


この数字を入れると、三層モデルの場合、図のような数字が出てきます。


補遺としてはこんなところですかね。


それにしても、はてダの tex、括弧が変。どーして?<追記: 6/23 げおさんの指摘を受けてミスを修正。そのほかのミスと文章も修正>

*1:面倒くさいので、「単位面積あたり」という言葉を省略してしまっています。物理学においてはではフラックス (流束) という便利な単語があるのですが、今回はそれを使わないことにします