harusantafe さんが twitter で論争を

されていたようです。togetter にまとめがありました。


マニアックな気候変動懐疑論「無放射緩和過程」論 -- togetter
http://togetter.com/li/89792


harusantafe さん (id:nytola さんの twitter でのお名前です) は


CO2の15μm吸収は既に飽和してますから、CO2が増えたところで温室効果にはほとんど効かない。


とおっしゃいます。これに、sotonohit さんが、


「飽和」論は1900年頃の理論。確かに「飽和」はしていますが、大気が吸収した赤外線は再び放射されるので、CO2濃度が高くなるほど、地表面から大気圏外に逃げ出すまでに通る距離が増え、つまりそれだけ多くとどまるようになります。


と突っ込むのですが、それに対して、


下層大気では無放射緩和過程がほとんどで15μmは再放射されません。その理論は物理的に否定されています。


とのご回答。


どこの研究者の方が「物理的に否定」なさったのかは知りませんが、とにかく、harusantafe さん、自信満々です。


togetter のまとめを、読む人が読んだら、完璧に論破されているのが一目瞭然です。どっちが論破されているかは、エリート研究者様に失礼なのでここでは書きませんが。


実は、harusantafe さんの発言には、二つのありがちな温暖化懐疑論が含まれています。一つは「飽和」論。もう一つは、togetter まとめのタイトルにもある「無放射緩和過程」論


「飽和」論というのは、こんな感じの懐疑論

温室効果って、地球が出す赤外線が CO2 によって吸収されるから起こる、ってことだよね。でも、今でも CO2 が吸収する波長の赤外線は大気圏外に出る前にほとんど吸収されているわけだから、これ以上二酸化炭素が増えても温室効果が強くなるはずないっしょ、JK


一方、「無放射緩和過程」論はこんな感じ。

二酸化炭素は吸収した赤外線を再放出することで温室効果が起こるっていっているけど、そんなわけないじゃん!赤外線を吸収した二酸化炭素の分は、そのエネルギーを赤外線として再放出するまでにある程度時間がかかるわけだけど、その前に衝突してそのエネルギーをほかの分子に渡しちゃう。再放出なんてほとんど起きないよ。

ネット懐疑論の中では、The Black Crowes さんが精力的にこの議論を展開されています (展開されていました、と過去形にした方がいいのかな?) たとえばこちら

http://feliscatus.blog77.fc2.com/blog-entry-76.html


「飽和」論も「無放射緩和過程」論も、確かに、わかりにくい議論なんですよね。いえ、物理を学んだ方にはそんなに難しいものではないのではありますが。 物理を学んだ方にもわかりにくかったりもします。 *1


「飽和」論については、気持ち^1 の方で長々と私の思いを書いたことがありました。

放射と飽和論 -- 気持ち^1
http://onkimo.blog95.fc2.com/?tag=%B5%AD%BB%F6%3A%CB%B0%CF%C2%CF%C0


また、それとは違う角度で、飽和しても温室効果が増えるよ、ということを、こちらの記事に書いています。

厚着モデルの数式を含めた
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100622/1277211448


一方、「無放射緩和課程」論ですが、こちらはきちんと書いたことがありません。ただ、ポイントとなるキルヒホッフの法則を一度きちんと書いておく必要があるな、とは以前から思っていて、こんな風につぶやいたことがありました。

キルヒホッフの法則
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100413/1271087061


ただ、ちょっと書くのが難しいんですよね、これ。でも、せっかくの機会だから書いてみようかな。


あ、harusantafe さんはキルヒホッフの法則を当然わかっていらっしゃると思いますよ。聞いたら「知ってるよ」と答えるに違いないです www。

*1:トラックバックの t0m0_tomo さんの記事を見て修正。そういえば以前、私自身も radiative transfer は意外に難しい旨書いたことがありました。