日経サイエンスの三月号を

買いました。


日経サイエンスには、「サイエンス考古学」というコーナーがあって、そこに 50, 100, 150 年前の Scientific American の記事が紹介されています。


今月号には、50 年前、つまり、1961 年の記事に、「気候傾向への懸念」という記事があると書いてありました。


米気象局の Murray Mitchell, Jr. の報告で、1880 年以来続いていた温暖化傾向が終わり、1940 年代よりも 0.1 度低くなったとの報告があったとのこと。そして、


この下降傾向のおかげで「温室効果」への懸念が和らいでいる。温室効果とは、化石燃料の消費の増加で大気中の二酸化炭素濃度が上昇し、太陽エネルギーが滞留していく現象を言う。だが、寒冷化の原因は不明だ。1940年代と50年代に日中の気温が低下したが、これは産業汚染物質から発生するエアロゾルによって地表に届く太陽光が減ったためと考えられる。


だそうです。


1961 年代には「温室効果」、現代の用語では「温暖化」に対応しそうですが、それが Scientific American に掲載される程度に認識されていたんですね。「懸念」もあったというのは、ちょっとびっくり。でも、すでに真鍋さんの論文は発表されていたわけですから、そこまで驚くほどのことはないのかもしれません。*1


寒冷化については当時騒ぎがあったようです。たとえば、


1970 年代の認識 -- 地球寒冷化 -- Wikipedia
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%9C%B0%E7%90%83%E5%AF%92%E5%86%B7%E5%8C%96#1970.E5.B9.B4.E4.BB.A3.E3.81.AE.E8.AA.8D.E8.AD.98


のように、氷河期がやってくる、みたいな報告が一部ありました。いえ、多くの気候学研究者はそんなに大げさなことは考えていなかったようですが、社会に広まったのはインパクトのある「氷河期」だったのでしょう。このあたりの詳しいところは、masudako さんのこちらのブログ記事からたどってみてください。

「1970年代には地球が寒冷化するという科学者の意見の一致があった」という伝説 -- 気候変動・千夜一話
http://blog.livedoor.jp/climatescientists/archives/507677.html


昔は氷河期がやってくるとあおっていたのに、今度は温暖化なんて言っている、だから気候学者は信用ならん、とおっしゃる懐疑論者の方がいらっしゃいます。まあ、そう言いたくなる気持ちもわからないではないですが、「サイエンス考古学」にあったように、少なくとも科学の世界では、当時から地球温暖化"も"関心を持たれていたことは知っておいていただきたいものです。

*1:あいたたた、1961 年ではたしかに真鍋さんの論文は発表されていないですね。取り消します。masudako さんからコメントをいただきました。