SPEEDI 考 (3): 活用された ? SPEEDI

一般に結果が公開されることはありませんでしたが、それでも SPEEDI は活用されたのです。作った人たちはそう言っています。


読売新聞の誤認記事について -- 原子力安全技術センター
http://www.nustec.or.jp/news/pdf/kiji.pdf


SPEEDI の開発、運用をしている財団法人、原子力安全技術センターによる、読売新聞に対しての反論です。


平成23年3月15日(火)朝刊にて、当センターが運用しているSPEEDIシステムが予測不能との誤認記事がありました。


現在、3月11日に緊急時処理を文部科学省から指示を受け、毎正時(1時間毎に)及び特別条件での拡散予測図を文部科学省等に報告しており、今日現在においても継続してSPEEDIシステムは、住民避難や国の原子力防災対策で活用されていますので、お知らせします。

(強調は原文)


で、どんな風に活用されているか。ドキュメントには、"
SPEEDIにおける緊急時処理について" と題して何をやっているかを説明しています。気象データを元に"「局地気象予測データ」" を作り、文科省から "文部科学省から指示のある放出源情報を基に「風速場、大気中濃度、線量計算」を計算する処理" を行います。


これを国や地方公共団体に画像配信。今回の事故では地震により放射線のデータが入らなかったわけですが、緊急時の処理は別系統なので SPEEDI の活用は可能。


え、SPEEDI を作っているところが自画自賛しているだけだろ?そんなもの、信じられるか、ですって?


…、そうですね。


とはいえ、自画自賛がいけないとは思いません。SPEEDI に関わる人はもっと積極的に活用されたことをアピールすべきだと思います。


アピールしないと一般の人からは何やってるんだか、と思われてしまいます。そもそも、SPEEDI は一般に公開されるようには作られていませんからね。

SPEEDI とは -- 環境防災 N ネット
http://www.bousai.ne.jp/vis/torikumi/030101.html

万一、原子力発電所などで事故が発生した場合、収集したデータおよび通報された放出源情報を基に、風速場、放射性物質の大気中濃度および被ばく線量などの予測計算を行います。これらの結果は、ネットワークを介して文部科学省経済産業省原子力安全委員会、関係道府県およびオフサイトセンターに迅速に提供され、防災対策を講じるための重要な情報として活用されます。

つまり、対策の決定に使われるのであって、一般の人に伝わるのは最終成果物である対策そのもの。SPEEDI は一般の人には見えないところに置かれていたのです。この騒ぎの前までは。


これまでにも引いた、SPEEDI の結果が乗っているページを見ると、実験条件が並んでいます。


こちらのページ
http://www.nisa.meti.go.jp/earthquake/speedi/erc/speedi_erc_index.html


"2号機ベントを仮定した影響確認のため" とか、"1号機格納容器破損による影響確認のため" とか、これだけを見ると重要な役割を果たしているように私には見えます。


たぶん、ある程度活用されているのでしょう。


だけど。


こんな記事もありました。


拡散の予測 地元で活用できず -- NHK 「かぶん」ブログ
http://www9.nhk.or.jp/kabun-blog/200/80850.html

… 国の防災基本計画ではデータは専用の回線を使って文部科学省から福島県に直ちに伝え、避難などの判断材料にすることになっていました。ところが、福島県の災害対策本部によりますと、12日に1号機で水素爆発が起きたあとも、国から予測データについての連絡はなかったということです。このため、福島県が国に要請した結果、避難指示が出たあとの13日の午前10時半すぎに、ようやくファックスで一部のデータが届きましたが、その後、2号機と3号機で爆発が起きても再び連絡はありませんでした。こうした対応について、文部科学省では、地震で回線が故障したため、電子メールに予測データを添付して送ったとしていますが、福島県によりますと、連絡がなかったために膨大なメールに埋もれてしまい、担当者が15日にメールに気づくまで避難などに活用することはなかったということです。これについて、福島県の災害対策本部では「メールで送っただけというのは連絡をしたことにならない。今回の対応については強い不信感を持っており、国には正確で迅速な情報提供を求めていきたい」と話しています。


あれれ。SPEEDI の使われ方の一つに、予測計算の結果が "ネットワークを介して文部科学省経済産業省原子力安全委員会、関係道府県およびオフサイトセンターに迅速に提供され、防災対策を講じるための重要な情報として活用" されるということがあるはずです。ところが、「かぶん」の記事によると、少なくとも、地方自治体への情報提供、は果たされていなかったのです。


きちんと地方自治体に情報伝達がなされていたなら、SPEEDI は活用されたと私は認定するつもりだったのだけど…。残念ながら、そうではないみたい。


ファクス送った送らないだの、メールは送っただの、メールだけじゃ連絡したことにならないだの、笑える突っ込みどころはたくさんありますし、それこそこの私のブログで扱うべきところではあるのですが、まあ、いいや。


ああ、いつにもまして論旨が不明確な記事になったなぁ。まあ、SPEEDI 開発者、原子力安全技術センターはもっとがんばって活用されたことをアピールすべきだと最後に書いて、この記事を終わりにしましょう。


SPEEDI 考、まだまだ、だらだらと続きます。