マイナースポーツの悲哀みたいなものを

感じたわけです。


普段はこれっぽっちも関心を寄せられないのに、オリンピックの時のみ注目される。そんなスポーツ。マスコミで"メダル確実" とか喧伝されて、一時だけ耳目を集める。


ところが、マスコミもそのスポーツが全然わかっていないから、中身のある "報道" ができない。仕方がないから、いかに練習が厳しかったかとか、親がどのように選手を育ててきたか、といった、種目に関係なく適用可能な、お決まりの "人間ドラマ" に落とし込む。


オリンピックでの競技の実況もひどい。凡戦でも「手に汗握る試合ですね」などと紋切り型で "盛り上げ"、画面を見ていればわかることをわざわざ絶叫しながらアナウンス。あきらかな日本の負け試合でも「まだまだわかりません」とか。そして、試合中も恩師の激励や選手の親に対しての感謝の気持ちなど "人間ドラマ" が盛りだくさん。


メダルが取れないとなったら、もう役に立たないとばかりに報道がしぼみ、次のオリンピックまで話題にも上らない。もちろん、だれもそのスポーツの中身を覚えていない。


もうとにかくひどいわけです。


多くのマスコミは全く準備ができていないわけですね。そもそも準備をするつもりさえなさそう。スポーツなんてどうせわからんだろう、と視聴者をなめきっているように思えます。お手軽に絶叫と人間ドラマを提供してれば視聴者は満足するだろうとたかをくくっているみたい。


私の見る感じ、NHK だけは違いますね。アナウンサーは絶叫を避け *1 、テレビ慣れしていないはずのマイナースポーツの解説者から、興味深い話を引き出す。NHK のアナウンサーは訓練されているなと思うわけです。


これは、普段からいろんなスポーツを放送しているという、日頃のの努力の積み重ねでしょう。野球、サッカー、相撲から、ラグビー、バレーボール、バスケットボール、柔道、剣道、ハンドボールフィールドホッケーにいたるまで、多彩なスポーツを放送しています。当然、絶叫に頼らず、試合のポイントを解説者とアナウンサーが落ち着いて話す。周到な準備が裏にあるはずです。マイナースポーツの視聴者は多くの場合そのスポーツに詳しい人たちでしょうから、絶叫と人間ドラマでは納得しないでしょう。その期待に応えようとしていて、それがオリンピックの報道にも生かされているように思います。


今回の SPEEDI気象庁放射性物質の拡散予測、マスコミの報道ぶりを見ていると、ああ、この手の数値計算は "マイナースポーツ" なんだな、と思いました。


普段これっぽっちも注目されていないのに、こんな時ばかり注目を集める。マスコミから、放射性物質の拡散の情報を出せと言われる。


ところが、マスコミも数値計算なんて全然わかっていないから、中身のある報道ができない。仕方がないから、計算しているのに情報が出てこないとか、海外にだけ情報を公開して国民に知らせていない、と、テーマに関係なく適用可能な、お決まりの "官僚叩き" に落とし込む。


結果が公表されても、その報道がひどい。読売新聞などは "10 兆分の 1 ベクレル、1000 兆分の 1 ベクレル" といった値をそのまま書き写すだけで、なんら有益な情報は付け加えられない。でも、もちろん、官僚叩きも盛りだくさん。


そして、数値計算結果が公表されて、おもしろくないから記事を書く役には立たないとわかると、とたんに興味を失い、後追い報道などない。もちろん、だれも数値計算など忘れてしまう。たぶん、次の原発災害があるまで、思い出す人などいないでしょう。派手に人の印象に残るような結果ではありませんでしたからね。メダルの取れなかったマイナースポーツみたいに。


もうとにかく、ひどいわけです。


多くのマスコミは全く準備ができていないわけですね。そもそも数値計算とはなんぞやということを勉強する気さえなさそう。もしくは、数値計算などわからないだろうと、読者をなめきっている。お手軽に官僚叩きを書いていれば読者は満足するだろうとたかをくくっているみたいです。


この件に関して NHK がほかのマスコミと違うかどうかはわかりません。私の見る限り、NHK は今回の騒ぎはスルーだったと思いますが、報道したかもしれません。個人的には、今回の騒ぎはスルーでよかったと思っています。詳しい報道があればうれしいですが、ま、それほどのニュースバリューはないでしょう。


震災報道、原発報道を見る限りでは、スポーツ中継と同じく、やはり NHK は他のマスコミとは違うなとは思っています。良質の科学番組を作り続けている、日常の努力の結果だと思います。


…。あれ、でも、読売新聞って、科学記事書いてたよな。科学部もあるはずなのに…。


どうして???

*1:残念ながら最近はちょっと変わってきた気もしますが