久しぶりにとあるグラフを拝見したので、
思わず記事にしてしまいました。
そのグラフとはこちら。
先日取り上げた nytola さんのブログで紹介されていました。
Climategate、IPCC-Gate後の世界 -- nytola の日記
http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708/1278644370
魚拓
http://megalodon.jp/2010-0720-2310-58/d.hatena.ne.jp/nytola/20100708
太平洋十年規模振動
グラフについて話す前に、まず、太平洋 10 年規模振動 (Pacific Decadal Oscilation, PDO) について説明しましょう。って、このあたり、私の大変苦手とする分野なのですが。
エルニーニョ、聞いたことありますよね?起こると日本が冷夏になったりするとか言われている奴。もともとは赤道太平洋の東側 (ペルー沖) の海水温が上昇する現象で、同時に赤道太平洋の西側からインド洋にかけての温度が下がって、そのせいでインドネシアあたりでの上昇気流が少なくなって、それが降りてくる場所にある小笠原高気圧に影響を与えて、で、むにゃむにゃ、と、地球全体の気候に影響を与える、あの、エルニーニョ。
エルニーニョはラニーニャと呼ばれる逆の現象とセットになって、気候学者はエルニーニョ・南方振動 (El Nino Southern Oscillation, ENSO) と呼んでいます。数年おきにエルニーニョとラニーニャが入れ替わるので、振動と呼ばれるわけですね。世界中に影響を与える ENSO。
でも、このような現象は ENSO だけではありません。インド洋ダイポールモード、北極振動、北大西洋振動、南極振動、もう山のようにあるわけです。振動、振動 (モードという言葉も振動を表しています)、地球はいつもぶるぶると震えている!
そして、PDO もその一つ。赤道太平洋の東側の海水温が上がると、日本の東側の海水温が下がる。そのほか、アリューシャン列島付近で気圧が下がったり、風が変わったりします。まあ、図を見てもらえりゃ一目瞭然 *1。
PDO に付随する温度 (色)、風 (→), 気圧のずれ。左側が "warm phase"、右側が "cool phase"。それぞれ、PDO 指数が正、負に対応する。つまり、PDO 指数が正の時は左側のようなパターンがそのほかの温度や風に足しあわされていると言うこと。http://jisao.washington.edu/pdo/ より。
この PDO、暖かいところ、冷たいところが出てくるだけではなく、地球の平均気温に影響を与えてもいるようです。指数がプラスの時は地球の平均気温が上がるらしい。
地球全体に影響を与える PDO、でも、まだまだ解明されたとは言えません。はっきりとメカニズムがわかっていないからです。そのせいで予測も難しい。ググったら日本の研究者達が書いた次の論文が出てきました。
Pacific decadal oscillation hindcasts relevant to near-term climate prediction -- Proceedings of the National Academy of Science of the United States of America
http://www.pnas.org/content/107/5/1833.short
本当は読んで詳しく説明すべきところですが、わたし、この手の、何かを当てに行くタイプの、専門用語で言うとデータ同化が出てくる論文が大変苦手で、ちゃんと理解できていません。
とはいえ、研究者達は今一生懸命 PDO のことについてしらべているということは間違い有りません。紹介した論文ではスーパーコンピュータをがりがりと使って計算した結果が載せられています。
PDO の予測は難しく、世界中の研究者が試行錯誤しているところです。
温暖化懐疑論と PDO と Easterbrook 教授の天才的な予測手法
ところで、PDO, 懐疑論業界でも話題です。なんとなれば、最近 PDO の振動が、地球を暖める方から冷やす方にふれたかもしれないからです!これから地球は寒冷化!
この点でがんばっていらっしゃるのが Easterbrook 先生。West Washington 大学の地学の名誉教授で、冒頭のグラフの作者です。先生曰く、太陽の活動が PDO に影響を及ぼして *2、それが巡り巡って地球の温度に影響を与えているとのこと。そして、今後数十年、PDO は負に、つまり、地球の温度が低下する方向に推移するだろうと予言なさいます。
そして、なんと!この先生、誰もが成し遂げなかった PDO の数十年にわたる予測に成功したのです。それも、誰もが予想だにしなかった方法で!!!
それは…
コピペ!!!
です。スパコンも使わずに予測ができて、お手軽簡単、まあ素敵!
1960 年あたりと、2020 年あたりの、一時的に正になっている部分をよーく見てください。同じに見えませんか?似てるなとおもったら、その両側も見てください。ね、ほら、ほら!
私はこちらの綾波シンジさんの記事でこれを知りました。
PDOで寒冷化するとかいう珍文書 -- 環境問題補完計画
http://blogs.yahoo.co.jp/eng_cam_fld_tgs/38927185.html
綾波さん、鋭いですね。最初にこれを読んだとき感心しました。
nytola さんはどうなのでしょうね?米国在住の研究者の方ですから、やっぱり鋭い方に違いない。コピペであることを重々承知の上で紹介されてるのでしょう。
PDO 温暖化懐疑論への期待
Easterbrook 先生謹製のこの予測、一時、いろんなところで目にしました。昨年の春頃かな、なんか、PDO ベース懐疑論の大ブームがあったので。ちょうど綾波さんの記事が書かれた頃ですね。
nytola さんのおかげでもう一度火が付けば楽しいです。たくさんの方がコピペ予測を片手に懐疑論を唱える情景は、心温まるものがありますよね。皆さん、是非 nytola さんのブログを宣伝してくださ〜い。
ところで、この図、論文に載ったのかな?せっかくだから、査読論文として投稿してほしーなー。でも、そのとき出典とか方法とかどうやって書くのだろ?2000 年代前半ぐらいまでは http://jisao.washington.edu/pdo/PDO.latest を引けば良いとして、予測部分は先生独自の研究のはず。このオリジナリティあふれる解析法はどう書けばいいのか?
あ、正直にコピペしたって書けば良いか。え、そんなの査読通らないだろ、ですって?いえいえ、査読つき懐疑論論文ジェネレータ、Energy & Environment に投稿すれば充分通ると思いますよ。
私としては、何もコピペなんてせずに、自分の予想を手書きで書き入れれば良いのにね、と思います。あ、でも、丸山さんはそれやって江守さんに突っ込まれていたな〜。リファレンス、俺、なんちて。
ときどき想像の斜め上を行くことをなさる懐疑論の人たち、とっても一生懸命でかわいげがあるなぁと思います。なんていうか、お茶目?
とはいえ、いくら一生懸命な研究でも、コピペ未来予測なんて、いかなホッケースティックを載せた IPCC でもさすがに許されません。nytola さんは書いておられます。
おっしゃるとおり、ずいぶんな違い。将来 ICCC 報告書なんてものが作成されたあかつきには、このグラフが載ったりするのでしょうか?楽しみです。国連IPCC(気候変動に関する政府間パネル)と名前こそ似ていますが、ICCCは人為的CO2温暖化説に否定的な研究者(懐疑派)が中心となっている国際会議で、アルファベット一文字違いながら中身は随分と異なります。
さて、このあと PDO はどうなっていくのでしょうか?こちらの図を見てください。
(http://jisao.washington.edu/pdo/ より。2010 年 7 月 16 日。これ、Easterbrook 先生の図と同じ色遣いですね、てか、先生、これの古い奴からコピペ予測を作ったのかな?)
2009 年 9 月の段階で、かなり正に近いところまで戻って来ています。おや、一番左端には赤い棒が見えてますね。正になったと言うことか?まあ、懐疑論者の方は (温暖化論者の方も?よくわからん) みなさん PDO は負になったのだろうな、と考えているみたいなので、このまま負に逆戻りかもしれません。どうなるんでしょうかね?こちらも楽しみです。
え、図の 2009 年の値、Easterbrook 先生の予測と違う?先生の予測ははずれ???
そうですね、確かに違います。でも、それは NOAA がデータを改ざんしているのかもしれないじゃないですか www だれもコピペ予測の方が間違っているなんて断言できないと思いますよ。えっへん!