今、日本は急速に温暖化しつつあります。

気象庁の観測によると、2010 年 4 月から 5 月までの一ヶ月間で、東京の気温は日平均ベースで 6.6 度上昇しました。


http://www.data.jma.go.jp/obd/stats/etrn/view/monthly_s1.php?prec_no=44&prec_ch=%93%8C%8B%9E%93s&block_no=47662&block_ch=%93%8C%8B%9E&year=2010&month=&day=&elm=monthly&view=


一ヶ月間の気温上昇が IPCC の温暖化の予想、1990 年から 2100 年までに最大 6.4 度の上昇、という予想を既に上回っています。観測された温度上昇は、100 年あたり約 8000 度という、きわめて危険な速度での温暖化であり、このままでは今世紀末、東京においてありとあらゆるものが固体や液体として存在できなくなり、プラズマ化してしまう危険をはらんでいます。


早急かつ断固とした温暖化対策が必要です。


なんて、ぼけをかましてみましたが、いつのまにか暖かくなりましたね。良い季節です。


まあ、地球温暖化と季節の移り変わりによる温度変化は原因が異なるので、比べるのはばかばかしい訳です。


一般的に、タイムスケールや空間のスケール、振幅 (この場合は温度の上昇度合い) の異なる現象の背後には、別のメカニズムが隠れています。季節的な温度の上昇は地軸の傾きによる日射の変化、100 年スケールの全地球平均気温の上昇は CO2 をはじめとする温室効果ガスの増加と、別々な原因があるのです。


春の陽気に誘われて外を歩きながらぼんやりとそんなことを考えていたら、槌田さんの論文を思い出しました。


槌田さんの論文
http://env01.cool.ne.jp/global_warming/saiban/rep01.pdf


論文関係のことについては、こちらのシリーズ記事を参照。


槌田氏のとほほな裁判 -- 温暖化の気持ち
http://onkimo.blog95.fc2.com/?tag=%B5%AD%BB%F6%3A%C4%C8%C5%C4%BB%E1%A4%CE%BA%DB%C8%BD


槌田さんの論文を思い出すと、槌田さんは数年 (2~3 年程度) 、数 ppm の CO2 濃度の変化と、数十年 (100 年程度のスケール) で 100 ppm くらいになる CO2 濃度の変化を同じ枠組みで、つまり、温度変化による海水の CO2 溶解度の変化によって説明しようとしたわけです。


そして、この論文を天気がリジェクトしたことに対し、「短期も長期も一緒の解析をやったのだから云々」ということを主張し、受け入れられなかったので提訴しました。


話は逆です。


解析は確かに短期も長期も含まれているかもしれません (この部分、ちょっと嫌らしいところなのですが)。でも、二つの CO2 濃度の変化、つまり、数年スケールの (槌田さん曰く、エルニーニョに関連した) CO2 濃度の変化と、数十年スケールの CO2 濃度の変化の背後には、普通に考えて何らかの違うメカニズムが存在しているはずです。


槌田さんはここを説明しなかった。エルニーニョによる海洋の CO2 溶解度の変化 (これはこれで問題のある説明なのですが) 以外のメカニズムを説明しなかった。一緒であると本気で思っているのなら、同じメカニズムがなぜタイムスケールを超えて働くかを説明しなかった。


まあ、でも、槌田さんにはこの辺が受け付けられなかったのかもしれません。査読者がどんなコメントを出したか知りませんが、どのようなコメントを書いたとしても、短期長期論争にはそれまでの遺恨があるので、理解しようと心を開くことはなかったのでしょう。


しょうもない論考ですが、一応まとめます。


槌田さんの論文の主張。それは「地軸の傾きが春から夏への温暖化を説明するから、地球温暖化も同様に地軸の傾きで説明できる」という無茶な主張と似たところがあります。


CO2 増加による地球温暖化を否定するには、溶解度の変化以外の説明を考える必要があるでしょう。CO2 濃度の増加を海洋の溶解度の増加で通したいのなら、何か別な (エルニーニョ以外の) 説明を考える必要があるでしょう。


世間は鳩山辞任で大騒ぎなのにこんなどーでもいいことをのんびりと考えてしまいました。暖かくなりましたね。