シュピーゲル誌記事の感想の
続きです。
シュピーゲルの記事を読みました。
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100527/1274914130
改めて記事を読んで思ったことを書いておくと、
- 感情に訴える書き方をしている
- クライメイトゲート事件を扱っている
- しかし、温暖化するという事実が覆されるとは思っていない
- でも、温暖化対策は無駄なようだ or する必要はなさそうだと考えている
ということです。
で、思い出したのが「温暖化イメージ戦争」
温暖化イメージ戦争の時代を生きる -- 温暖化科学の虚実 研究の現場から「斬る」!(江守正多) -- 日経エコロミー
http://eco.nikkei.co.jp/column/emori_seita/article.aspx?id=MMECza000016032010
この中で江守さんはこう語っています。
今後、科学の側がどんなにベストの対応をしたとしても、社会において温暖化問題をめぐるイデオロギー対立が続く限り、また、仮に対立が政治的に決着したとしてもそれに対する不満がくすぶり続ける限り、「イメージ戦略」としての温暖化懐疑論が消えることはないでしょう。そして、僕たちはそれとずっと付き合っていかなければならないのだろうと思います。
このシュピーゲル誌記事は、その端的な例だと思います。
温暖化対策を批判する記事を書きたかった。そのためには、温暖化論のイメージを傷つける必要がある。だから、クライメイトゲート事件を扱った。
著者はクライメイトゲート事件が IPCC の結論にたいした影響を与えないことを知っているのです。そう本文にも書いている。論理の展開を読めば、温暖化した際の影響評価のことを中心に、温暖化対策批判を行えば済む話です。あの事件を取り上げる必要なんてありません。
それでもあえて、クライメイトゲート事件を取り上げた。私には温暖化対策とイメージが重なっている IPCC の権威を傷つけるためにこの記事を書いたとしか思えません。
そう、イメージ戦争なのです。
そして、日経もこのイメージ戦争に参戦し始めたのかなと思います。たとえば、池辺豊さんがこの記事を学術会議シンポで紹介したこと。クライメイトゲート事件については、ガーディアン記事を紹介することもできたのに。
そして、このシュピーゲル誌記事を紹介した澤昭裕さんの記事は日経のサイト ECO JAPAN に掲載されています。。
クライメイトゲートから何を学ぶか独シュピーゲル誌の調査報道を読む -- 澤昭裕の『不都合な環境政策』 -- ECO JAPAN
http://eco.nikkeibp.co.jp/em/column/sawa/13/index.shtml
あ、池辺さんはご自身でクライメイトゲートこんな記事も書いていました。
[求]予防原則は諸刃の剣−科学的知見が重要(10/03/19) -- 環話Q題 Nikkei Ecolomy
http://eco.nikkei.co.jp/column/kanwaqdai/article.aspx?id=MMECzh000018032010
この記事については私がこちらで取り上げたこともありました。
温暖化を語るのが格好悪い
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100410/1270836604
クライメイトゲート事件を取り上げるのは、悪いことではありません。海外で起きている大きな事件を報道することは報道機関の重要な使命です。
でも、如何に報道するか、というところにも、報道機関の姿勢が問われると思います。以上に書いた記事では、温暖化論を批判するというより、温暖化論のイメージを傷つけるように書かれていて、私としては残念です。
温暖化報道において、Nikkei は比較的信頼できるメディアであり続けてきたとおもいます。他のメディアが温暖化対策万歳のイメージ戦争に荷担してきた中、比較的落ち着いた報道をしていたと私は感じています。ウェブの Nikkei Ecolomy では近藤洋輝さんや江守正多さんのコラムを掲載するなど、きちんと研究者の声を流してくれたありがたいメディアです。
今後、どうなっていくのか。注目していきたいと思います。