地球温暖化問題の特集が

科学技術社会論 (STS) の雑誌に掲載されているようです。masudako さんが取り上げていました。


科学技術社会論研究」地球温暖化問題特集号 -- 気候変動・千夜一話
http://blog.livedoor.jp/climatescientists/archives/1553656.html


筆者を見ると、江守さんや増田さんの名前が見られますね。そのほかにも住さんなど、科学者として社会に向き合ってきた人たちの名前が連なっています。一方で、懐疑論者からは伊藤公紀さん。これは興味深いですね。私の知らない名前もあります。STS 専門家の方なのでしょう。


おもしろそうですねぇ。手に入れて読んでみようかと思っています。うーん、僕のお小遣いとくらべると高いなぁ…。今月はちょっと飲み会を減らさなきゃ…。


個人的には、地球温暖化問題は科学コミュニケーションの成功例だと思います。CO2 が増えると地球が温暖化する、という科学的な事実が多くの人に受け入れられている。これ、よく考えたらすごいことですよ。二酸化炭素なんて、人の呼気に含まれる以外には、火が燃えたらでるもの、炭酸水に入っていているもの、ぐらいしかイメージのない人がそれまでは大半だったと思います。それが今は、二酸化炭素と言えば温暖化!


温暖化問題をオゾン層の話と混同している人もいますし、温暖化懐疑論もウェブでは多く見られますが、全体としてみれば、科学コミュニケーションとしては成功だと思っています。STS の雑誌で取り上げられて、詳細な分析が加えられるのはいいことでしょう。


実は、STS なんてあまりかかわりたくないなぁ、と思っていたりもします。最近、STS の人たちの tweet を見る機会があって、読んでいてかなりフラストレーションがたまったからでした。


ニセ科学批判の活動を批判しているツイートを見たためです。それも、切れ味の良い批判なら納得したと思うのですが、なんというか、ふがふが、ふごふご、という感じのツイートを見たので。*1


とはいえ、もしかしたら一部の人かもしれませんね。これだけで STS のすべてを決めつけることはしないほうが良いでしょう。それでも語っちゃう。


温暖化懐疑論を扱うブログを書いている私は、ニセ科学批判の人たちにシンパシーを抱いています。温暖化懐疑論は決してニセ科学ではないと私は思っているのですが、 *2 とはいえニセ科学批判が参考になることは大変多い。


私にとってはニセ科学批判は大変に役に立っているのです。それに対して、STS の人はニセ科学批判の人たちに向かって「そんなやり方は良くない」との批判しながら代案を提示できないように見えたのです。


なんとなく、投資家と経済学者の関係になるのかなと思いました。もちろん、投資家がニセ科学批判の人たちで、経済学者が STS の人たち。


自分のお金できったはったの勝負を繰り広げる投資家と、そのような営みをふくむ経済活動を離れたところから客観的に見て記述する経済学者は、似て非なるもの。自分の才覚であまたのニセ科学と切り結んでいるニセ科学批判の人たちと、サイエンス、テクノロジーの社会の中での役割を記述する学問に携わる STS の学者。こちらも似て非なる物なのかな、と思うのです。


そして、経済学が重要なのと同様に、STS も重要です。


でも、投資家に経済学者が口を出してもいいことはない。損をした投資家に経済学者が「ざまみろ、そんな株買うからだよ」なんて言ったら、激怒されそうです。口出ししたのに、怒った投資家に「じゃあ、どの株買えばいいんだよ!言ってみろ」と言われたら、経済学者は「…ふぁんだめんたるずが…」とか、「…ぶらっくしょーるずしきによると…」とか言うばかり。「ふぁんだめんたるずってなんだ」と問われると、「おまえは経済がわかっていない」と返す。


いやですねぇ、こんな経済学者。ニセ科学批判の人たちと STS の、たぶんごく一部だと思いますが、その人たちの関わり合いを見て、こんな状況を思い浮かべました。


さて。経済学は重要です。投資家に直接役に立つ助言が出来なくても、経済指標を開発したり、理論を打ち立てたりすれば、投資家はそのなかから重要なものを選び取って投資に役立てます。経済学者の役割は、経済を記述すること。彼自身の仕事を全うすることが、最終的には一番投資家の役に立つのです。投資家に直接助言する必要はかならずしもありません。


STS も同じだと私は思っています。科学技術と社会の関わり合いについてきちんとまとめ、記述すること。それがめぐりめぐって、社会の役に立つのだと思います。今この瞬間に役に立たない STS を dis るひともいましたが、それはちがう。象牙の塔の中で磨き上げられる STS も、巡り巡って我々に恵みを与えてくれるもののはず。私としては、胸を張って研究に励んでいただければと思います。いつかそれがわかりやすい解説を伴って社会に出てきたとき、私も参考にするでしょう。


でも、それじゃあもの足りない STS の専門家の方もいらっしるようですね。そんな人たちが、ニセ科学批判の批判をされたのでしょう。まあ、気持ちはわかりますが、あんまり生産的ではないかな。


もしどうしてもやりたければ、自分が行動すべきだと思います。経済学者が自腹を切って、もしくは資金を集めて投資するようなものですね。ターレスのオリーブ絞り器。自分の理論を証明するもっとも格好良い方法だと思います。


そう思って調べてみると、実際は、政府や地方自治体のお役人を相手に行動しておられたりするんですよね。良い意味での御用学者として振る舞っておられます。また、サイエンスショップなどの活動も、すばらしいことだと思います。プラクティカルにはいろいろあるとはおもいますが、なにより動いておられるところはすごい。


STS とは、全体的にはすばらしいのかもしれませんが、とはいえ、ニセ科学批判批判を見る限り、げんなり、という感想しか出てきませんし、できるだけお近づきにならない方がいいかな、と思っています。


なんとかならんのかね。


もうちょっと書くかもしれません。

*1:あと、御用学者 Wiki を評価している発言があったのにも大変びっくりしました。

*2:ニセ科学的な物も一部にはありますが、まあ全体としてはニセ科学と呼ばない方が良いと思う