メモメモ。 - 「温暖化の気持ち」を書く気持ち

SSFS さん記事

harusantafe さんのツイートを引用

近々出版される論文。海洋蓄熱量が増加しているとするCO2温暖化説を明確に否定。クライメートゲート以降、温暖化脅威論を否定する論文が続々と掲載されるようになり、学会は着実に健全化している。
http://www.pas.rochester.edu/~douglass/papers/KD_InPress_final.pdf

元論文
R. S. Knox and D. H. Douglass, 2010, "Recent energy balance of Earth", International Journal of Geosciences, in press
http://www.pas.rochester.edu/~douglass/papers/KD_InPress_final.pdf

Abstract

A recently published estimate of Earth’s global warming trend is 0.63 ± 0.28 W/m2, as calculated from ocean heat content anomaly data spanning 1993–2008. This value is not representative of the recent (2003–2008) warming/cooling rate because of a “flattening” that occurred around 2001–2002. Using only 2003–2008 data from Argo floats, we find by four different algorithms that the recent trend ranges from –0.010 to –0.160 W/m2 with a typical error bar of ±0.2 W/m2. These results fail to support the existence of a frequently-cited large positive computed radiative imbalance.

onkimo 適当訳

要約

1993 年から 2008 年の海洋の蓄熱量から温暖化の効果を見積もった最近の論文で、この間の地球温暖化のトレンドが 0.63 ± 0.28 W/m と計算されている。この値は 2001-2002 年に起きた "平坦化" による近年 (2003-2008) の温暖化/寒冷化傾向を表していない。2003-2008 のアルゴデータに 4 種の異なる解析を適用したところ、海洋蓄熱量のトレンドは　–0.010 to –0.160 W/m2 で誤差は ±0.2 W/m2 であった。この結果はよく引用される正の放射の不均衡を説明しない。

中で行われている 4 種の "解析" はなかなか興味深い。それぞれ比較的簡易な解析なのだが、とはいえ 4 っつも 2003 年から 2008 年の間に適用し続ける執念がすごい。範囲を変えてみたりする必要は感じなかったのか？

あと、ocean heat content から

As many authors have noted, knowing FOHC is important because of its close relationship to FTOA, the net inward radiative flux at the top of the atmosphere.

と書いている。 $F_{OHC}$ は ocean heat content を変化させる熱フラックス、 $F_{TOA}$ は top of atmosphere でのネットのヒートフラックス。

温暖化の枠組みで言うと、 $F_{TOA}$ は CO2 の増減とはかんけいないはず。これは放射強制力などとは関係なさそう。つまり、地表の気温と相関があるわけではない。大気・海洋・土壌・雪氷圏のシステムにおける熱の増減に関係する。

別な言い方。温暖化の話は、大気については現在の平衡状態から CO2 が増加した平衡状態に移る話である。一方、 $F_{TOA}$ は平衡状態間の遷移にかかわる量である。<追記>
mushi さんにおしえてもらった記事。いつもありがとうございます。

'Missing' Heat May Affect Future Climate Change
http://www.sciencedaily.com/releases/2010/04/100415141121.htm#

$F_{TOA}$ を議論する背景にはこのような問題意識が有りそう。ちなみに、"missing" があるのは 2005 年から。2003 年ではない。
<さらに追記>
タイトルから考えるに、もしかしたら heat imbalance は海洋表層の熱量変化では解決されない、ということが主題？では元の Trenberth 達の論文ではこの imbalance を何に押しつけていたのか？
<さらにさらに追記>
Trenberth 論文はこちら *1
http://www.sciencemag.org/cgi/content/summary/328/5976/316

わからない、ということを強調している。そのほかには、ENSO と ocean heat content の関係も。(本文の)最後の 2 パラグラフだけ引用しておきましょう。

Closure of the energy budget over the past 5 years is thus elusive (7). State-of-the-art observations are unable to fully account for recent energy variability. Is the warming associated with the latest El Niño a manifestation of the missing energy reappearing?

Proposals for addressing global warming now include geoengineering, whereby tiny particles are injected into the stratosphere to emulate the cooling effects of stratospheric aerosol of a volcanic eruption (15). Implicitly, such proposals assume understanding and control of the energy flow, which requires detailed tracking of energy within the climate system. How can we understand whether the strong cold outbreaks of December 2009 are simply a natural weather phenomenon, as they seem to be, or are part of some change in clouds or pollution, if we do not have adequate measurements?

なお、解析に用いたデータのリファレンスは

J. Willis (private communication, 20 February 2009. The last 5 months are preliminary.)

Willis は JPL の人。彼の書いている論文はまとも。Knox and Douglass 論文に使われたのは彼の Argo のデータ。private コミュニケーションって…。

受理等の日付情報だが、

Received July 23, 2010; revised August 2, 2010; accepted August 3, 2010

かなりてきぱきと処理されている。すばらしい。

さて、この論文ですが、科学に何をプラスしたのか？言いたいのは、こちらの (NOAA の Argo の図) をぱっと見てわかる以上の、何を付け加えたか、ということ。

Upper Ocean Heat Content Anomaly -- Ocean Climate -- NOAA
http://oceans.pmel.noaa.gov/

思ったのですが、槌田さん、気象学会に固執しないで、論文を英語に翻訳してこの雑誌に送れば良いんじゃないかな？英語さえちゃんと書けていれば、あの内容なら受理されそうです。この論文だって通ったんだもの。

見たところ、できたばかりの雑誌なので、よい論文はのどから手が出るほどほしいはず。後になると面倒くさくなるかも知れないのでチャンスだと思うよ。

*1:Kevin E. Trenberth and John T. Fasullo 2010 "CLIMATE CHANGE: Tracking Earth's Energy" Science 16 April 2010: Vol. 328. no. 5976, pp. 316 - 317 DOI: 10.1126/science.1187272