エントロピーの話の続きで、武田邦彦さんの
ことを話します。そのまえに、復習おば。
前回の記事では、情報理論においてエントロピーがどのように定義されるかを話しました。
エントロピーのことを思い立って
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100430/1272557066
先の記事では書きませんでしたが、平均情報量、これがエントロピーなのですが、その定義は、ある事象 A が起きる確率を P(A) として、
と表されます。え、数式はもうたくさんだ?すみません。あと一つだけ。
A が二つの場合、つまり、A と not A の場合、A のおこる確率を p とすると、エントロピーは
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となるわけです。
前の記事を思い出してください。
- 珍しい情報ほど、情報量が大きい
- エントロピーが大きいほど、ある情報をゲットするのに、平均的には大きな情報量が必要となる。
- A or not A の場合。A と not A の起こる確率が等しいときがエントロピー最大。A が起こりにくい、もしくは not A が起こりにくい場合、エントロピーは小さくなる。
以上、復習終わり。
二人の温暖化論者
あなたは人の言うことを信用できますか?信用できるかどうかは、誰が言ったかに左右されそうですね。
ある人が何かを言ったとき、それを信用できるかどうかを考えてみましょう。信用できる場合を A、信用できない場合を not A とします。
温暖化関係のことについて発言する人を考えてみましょう。仮に M さんとしておきます。
M さんのブログではいつもきちんと下調べがされていて、おおむね参考文献へリンクがなされており、いつでも根拠となる文献まで遡ることが可能で、ブログの内容と文献の内容に矛盾がなく、さらに、わからないことはわからないと書かれています。
M さんが何かを述べたとき、それを信用できるという事象 A の確率 が 95 % であるとしましょう。この場合、「M さんの言ったことが信用できるか否か」ということを調べた際に得られる平均情報量、つまり、エントロピーは、0.29 となります。
別な温暖化論者、T さんを考えてみましょう。ブログに書かれている内容は、大変良い内容も書いてありますが、一方で、とんでもない間違いも混ざっています。断定調で書かれることが多く、参考文献はたまに示されて、それをたどった場合も T さんの発言と矛盾していない場合と全く異なっている場合があります。
T さんの述べたことが信用できる確率 が 50 % であるとしましょう。この場合、「T さんの言ったことが信用できるか否か」のエントロピーは、1 となります。
武田邦彦さん
武田邦彦さんという温暖化懐疑論者の方がいらっしゃいます。いえ、温暖化懐疑論者と言うだけではなく、環境問題を多方面に扱う論客です。「温暖化の気持ち」のこちらの記事で紹介しましたので、お暇ならお読みください。
一周年記念特別企画・地球温暖化懐疑論者列伝 (5) 武田邦彦さん
http://onkimo.blog95.fc2.com/blog-entry-87.html
この武田邦彦さん、とても困った方で、良いこともおっしゃるのですが、間違いも多い。先ほど述べた温暖化論者の T さんの様な方です。
私はいつも思うのです。武田さんのおっしゃることは、エントロピーが高いな、と。
現在、武田さんに対する批判は、おもに「間違ったことを言う」という点を中心になされています。たとえば、wikipedia:武田邦彦はその点を軸に書かれています。
一方で、武田さんを支持する人たちは、このような批判に対して、「武田さんは良いことを言う」という形で反論なさいます。たとえば、こちらの記事。まあ、批判に対する反論とは違うわけですが、「エントロピーが高い」という視点がなく、「良いことを言っている」という武田さんの論評の良い例ではあるので。
[書評]「CO2・25%削減」で日本人の年収は半減する(武田邦彦)-- 極東ブログ
http://finalvent.cocolog-nifty.com/fareastblog/2010/02/co225-a758.html
私としては、武田さん批判に、「エントロピーが高い」点を加えてもらえたらな、と思います。
もちろん、間違ったことをおっしゃるのを批判するのは重要です。そもそも、武田さんのいうことに間違いが多い、ということがわからなければエントロピーが高いなんてことは言えませんからね。
一方で、「正しいことも言う」という点も重要で、これが武田さんのエントロピーを高くしているわけです。だから話が大変ややこしくなる。
そう考えると、武田さん支持者の「武田さんは良いことを言う」は、エントロピーが高い、という批判に対して反論にはなっていません。反論しようと思ったら、「武田さんは良いことばかり言う」と述べなければならないのです。
一方で、批判者の側も、武田さんの過去の業績や、武田さんが言った正しいことは評価して、その上で、エントロピーが高い、ということをきちんと述べてほしいと思います。
いつも思うのです。本当にね、エントロピーが高いというのは困ったことなんですよ。そして、武田邦彦さんは本当に困った方なんですよ。
さて、このやり過ぎエントロピー論、もう少し言うことがあるので続きます。