なぜだか古典に触れる

時期みたいです、私の超個人的なブームです。めったにそんなことないのですが。


ふとしたきっかけで「ソクラテスの弁明」を読み始めました。以前一度読んだことがあるので、再読ですね。


ソクラテスの弁明・クリトン (岩波文庫)


で、あらためて思ったのですが、ソクラテス、いやなやつだな、と。


だって、政治家とか作家とか職人とかを訪ね歩いて、「あんた、私よりものがわかってないね」とか言うんですよ。言い放っただけではなく、たぶん、そのことを、ぐうの音も出ないように厳密に証明してまわったんですよ、この人。


そりゃ嫌われますよね!!!


で、詩人のメレトス (この人もソクラテスに論破された一人かな?) などが原告となり、ソクラテスを訴えます。ソクラテスは、裁判においても空気を読まずに自分が一番の物知りであることをちょー上から目線で証明してみせ、結局死刑判決が出て、で、逃げだそうと思えば逃げ出せたのに、そうするよう説得に来た友人まで論破して (このあたりは「クリトン」に描かれている) 死刑に処されるという、とてもロックというかパンクというかハードボイルドというかファンキーというか、なんかよくわかりませんけれどもそんな物語なわけですが、それはともかく。


ここで思い出したのは、槌田さんの新しい裁判のことです。


東京大学サステイナビリティ学連携研究機構が出した本、「温暖化懐疑論批判」を読んで激怒した槌田さんは、東大と著者の一部を相手取って、慰謝料や謝罪広告掲載を求める裁判を起こしました。


温暖化懐疑論批判」はこちら

http://www.ir3s.u-tokyo.ac.jp/sosho


訴訟についてはたとえばこちら

法廷に出る地球温暖化論争(科学技術部編集委員 吉川和輝) -- 日経産業新聞 online
http://netplus.nikkei.co.jp/ssbiz/techno/tec100114.html
(無料会員登録するなどして login しないと読めません。)


温暖化懐疑論批判」では、温暖化研究者が、槌田さんをはじめとする懐疑論者を相手取って、おまえら温暖化本当はわかってねーだろ、と言わんばかりに参考文献をあげつつ議論の穴をちょー上から目線で指摘してまわっているわけですよ。


そりゃ嫌われますよね!!!


ソクラテスとの違いは、批判された側が論破されたとは思っていないことでしょうか。あれ、でも、ソクラテスの場合でもそうだったのかな?


あと、ソクラテスの昔とは違い、議論でいくら人々を怒らせても死刑になることは普通ありません。いえ、普通なら裁判になるようなこともちょっと考えられないので、なにが起こるかわかりませんが。


どんな判決がでるのでしょうか?死刑にはならないにせよ、衆愚政治ギリシアに逆戻りなんてことになったらどうしよう?ははは、まあそんなことはないでしょう。きちんとした判決が下されると信じています。


槌田さんがソクラテスに擬されるような裁判になると絵的には格好良いのですが、残念ながらそうではなく、槌田さんの立場はメレトスです。まあ、ソクラテスになってもらうにしても、好き好んで槌田さんと裁判をしたがるような暇な人は、あんまり今の日本にはいなさそうです。


※あ、一応書いておきますが、温暖化研究者が懐疑論者を批判することは良いことだと思いますし、やらなければならないことだと思います。それがいかに上から目線であったとしても。人から嫌われる行為だったとしても。