君は科学のために死ねるか

タイトルは特に意味はありません。杉良太郎の名曲をもじっただけです。



科学なんて命かける必要はありません。絶対に死なないようにしてください。人生をかけるのは大いに結構。


さて、事業仕分けで話題のスパコン、これまでもこの日記で見てきました。

これまでに書いた次世代スパコン仕分け関係の記事
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20091113/1258084780
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20091116/1258297405
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20091116/1258345793
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20091117/1258447165


このスパコンに対して、科学者の側から緊急声明が出た模様です。


事業仕分けスパコン研究「凍結」で「国益損なう」−−緊急声明 -- 毎日jp
http://mainichi.jp/select/seiji/news/20091119ddm012010052000c.html


声明の記事ではないけど、別なのも書いておきます。


「国際競争力を失うきっかけになる」 スパコン凍結で研究者 -- MSN産経ニュース
http://sankei.jp.msn.com/science/science/091119/scn0911190009000-n1.htm


声明自体はこれのようです。


次世代スーパーコンピュータ開発に関する緊急声明 -- 計算基礎科学コンソーシアム
http://suchix.kek.jp/ccfuns/Appeal/appeal.pdf


まじめに書かれています。普通の緊急アピール。


でもねぇ。せっかくだから、科学者側から大向こうをうならせる名言を発してほしいですね、って、一歩引いた立場から気楽に批判してみたりしていますが。


名言で思い出したのは、ニュートリノ研究の戸塚洋二さんの言葉


第11回「ノーベル賞・小柴教授チームの素晴らしい「失敗学」実践」 -- Nikkei Biz Plus
http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/hatamura.cfm?i=20051214ura11cd


工学部の教授が講演の質疑で「実用化技術を考えている工学系の学者からみると、役に立たない研究をすることの意味がわかりません」とイジ悪な質問をした。戸塚教授はスライドの画面いっぱいに映された「愚問」という大きな二文字を指さして笑った。ノーベル賞受賞者の小柴さんと同じ様に弟子もユーモアあふれる研究者だった。
(下線は onkimo)


もう一つ思い出した言葉。こちらは有名、アメリカ、フェルミ研究所を作ったロバート・ラスバン・ウィルソン。wikipedia:ロバート・ラスバン・ウィルソンより。


彼はフェルミ研究所で自ら設計したシンクロトロンに莫大な国家予算が使われることについて上下両院合同原子力委員会で釈明を求められたことがある。 建造に反対するジョン・パスター議員が「国家防衛の観点から、この機械には何の価値もない」と主張した際にウィルソンは「この装置は直接的には国家防衛には何の関係もありません。しかし、わが国を守るべき価値のあるものにするという点ではおおいに関係があります」と反論し、予算が認められることになった。
(下線は onkimo)


二つとも、科学者の矜恃を示す、すばらしい言葉だと思います。スパコン論争でもこういった名言が聞けると良いな。


もちろん、受け止める側の資質、という問題もあります。どんな良い名言が発せられても、国民が聞く耳を持たなければだめなので。ウィルソンの言葉が効果的だったのは、戦後すぐのアメリカ。国全体が「我々は世界一」という誇りを持てていた、という時代背景があるでしょう。


今の日本でそんなこと言ってもねぇ。「1位でなければ駄目なのか」っていわれる国ですから。


でも、次世代スパコンは 1000 億のプロジェクト。なにか、すばらしい名言の一つぐらい期待してもバチは当たらないでしょう。