温暖化ばかと呼ばれるべき

人たちがいると思います。


地球温暖化に少しでも関係があれば、それを地球温暖化の文脈のみで解釈してしまう人たちのことです。


え、おまえら温暖化論者のことだろ、って?


まあ、そういう人もいるかも知れませんし、私もかなりそういうところがありますが、ここで語りたいのは違います。温暖化懐疑論者にも、温暖化ばかと思われる人たちがいるのです。


温暖化ばかの人たちは、次のような議論を大喜びで取り上げます。


たとえば、nytola さんが紹介されている Watt さんの議論。


http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708

さて温暖化詐欺に話を移すと、アメリカの気象予報士で有名なブロガーAnthony Watts氏は、彼が突き止めた温暖化詐欺の手法を報告。以前の私の日記でも紹介しましたが、市民が協力して調査を行ったところ、アメリカの気温観測ステーションの90%がいつの間にかアスファルトの駐車場やエアコンの排熱口の近くなど暑い場所に置かれており、通常より1〜5℃も高めの気温を叩き出していました。加えてアメリカ海洋大気圏局(NOAA)はデータ均質化やスムージングなどの“補正”を行い、ヒートアイランド現象を誇張することで地球温暖化を演出しているとWatts氏は発表。


nytola さんの同じ記事では、D'Aleo さんの議論も紹介されていますが、これも温暖化ばか好み。


そしてカナダの気象学者のJoseph D'Aleoは、NOAAとアメリカ航空宇宙局NASA)のデータ不正について報告。NOAAは温暖化を示す観測ステーションだけを選別しているようで、NOAAのデータベース(GHCN)に登録されているステーション数は、1980年と比べて2007年には1/3以下にまで不自然に減少しています[10]。ステーション数が減少したのはNOAAによると、


「データ取得に時間がかかるものもある」


だそうですが[11]、20年前のデータが未だに更新されていないのは、あまりに時間がかかり過ぎでしょう。


Anthony Watts氏も説明していましたが、NOAAは謎の“補正”を施すことで寒冷化しているステーションのデータをあたかも温暖化しているかのように書き直す“マジック”に成功しています。一方NASAは世界の気候変動を算出する際にNOAAのデータを利用していますが、より暖かい場所に設置されたステーションのデータを寒い地域のものとして補ったり、NOAAに負けじと更なる地球温暖化への挑戦を日夜続けています。


このような懐疑論に対しての反論は、たとえばこちらの記事。
http://www.ncdc.noaa.gov/oa/about/response-v2.pdf
これは nytola さんの自身の紹介ですね。ブログ記事へのコメントに書いてあります。
http://d.hatena.ne.jp/nytola/20100708#c1279220195


また、masudako さんはこちらの反論を紹介。
http://europa.agu.org/?view=article&uri=/journals/jd/jd1011/2009JD013094/2009JD013094.xml
てか、このリンクが載っている kikulog のコメント自体が重要ですね。
http://www.cp.cmc.osaka-u.ac.jp/~kikuchi/weblog/index.php?UID=1270268042#CID1279063432


反論への反論を、nytola さんは先に紹介したブログコメントで紹介しています。
http://wattsupwiththat.com/2009/06/24/ncdc-writes-ghost-talking-points-rebuttal-to-surfacestations-project/#more-8837


私はこの問題を調べたことはありません。データの扱い方も詳しくありません。が、思うことがあるので、無知をさらけ出しつつ少々書きたいと思います。


補正について


次のような架空の観測ステーションを考えてください。


100 年前、まだそんなに大きくなかったとある国の、とある湾に面する首都の外れにそのステーションは設置されました。都市が大きくなるにつれ、その場所は次第に都市に飲み込まれていきましたが、モータリゼーションの始まる前の時代、木でできた建造物と水を吸収する土の道路、気温への影響は限定されたものでした。そんな都市を戦争が襲い、ある時焼け野原になってしまいました。戦後始まった復興。国は高度成長をはじめ、コンクリートのビルが並び、道路が舗装され、たとえば夏はかなり耐え難い気候に変わってきますし、冬は水たまりに氷が張るのを見ることも少なくなってきました。国はさらに豊かになり、町中にはエアコンが行き渡るようになりました。また、ステーションの海側に二百メートルを超える高層ビル群が建ち、海風を遮るようになってしまいました。


このような観測ステーションのデータを、どのように扱えばいいでしょうか?


まず、その値自体に意味はあるでしょう。その土地の気候の変遷を記したデータは貴重です。


一方で、気象ステーションは通常天気予報に用いられています。その場合、ステーションのデータはある程度の広がりを持つ地域を代表しています。天気予報においては普通地上を四角形の格子に区切って温度を推定しているわけで、全世界を対象に予報するモデルは、最近は数十キロメートル程度と細かくなってきましたが、21 世紀に入るまでは、一つの格子が数百キロメートルと大きなものでした。


天気予報において、先ほど例に挙げた架空の観測ステーションのデータは、どのように扱われるべきなのでしょうか?たぶん、補正されないといけませんね。でも、どのような補正方法が考えられるか?都市化の影響はどう補正されるべき?格子のサイズが都市と同じくらいの大きさの場合と、数百キロメートルみたいな大きな格子ではやり方を変えるべきでしょう。海沿いにビルが建った影響は、季節によって、また、一日の中でも時間によって変わるでしょう。


事情は複雑です。補正方法の正解もありません。うまくいくか行かないかだけ。そして、補正がうまくいかなかった場合になにがおこるのか、というと、天気予報が当たらなくなります。


天気予報に観測データを取り入れる方法はデータ同化と呼ばれ、いくつかの手法があります。データに補正を加え、さらに、ここのデータがどのくらい誤差を持っているかの情報も付け加え、そこからできるだけ確からしい大気の状態を作り上げて、それを天気予報に用いるのです。


先ほどの観測ステーションのデータをなんの補正もなく使い続けて予報した場合、どのようなことが起こるでしょうか?データ同化手法によって異なりますが、周りから飛び抜けた高温を実現するためには、その場所になんらかの熱源があったとするか、どこからか高い温度の空気がその場所にやってきたとするか、そういった、ある種不自然な現象が起きていると考えて、天気予報を行うことになります。


高過ぎる温度の空気に対して熱源を与えるタイプの同化手法の場合、熱源の発する熱はかなりの大きさになるでしょう。nytola さんの記事には "エアコンの排熱口の近く" の温度計の話がありましたが、その温度計の値をそのまま採用した場合、その格子にはとてつもなく巨大なエアコンの排気口があることになるわけです。


たとえば、百キロメートルの大きさの格子の温度が、格子の一部を占めるだけの都市の影響により本来あるべき姿よりも何度か上がってしまったら、そこでは大気の状態が不安定になり、もしくは周囲より密度が低くなって、常に上昇流が発生し、雲が生まれ、雨が降りやすくなるわけです。影響はその格子にとどまらず、周囲の格子にも波及していくでしょう。


いずれにせよ、観測ステーションの指す温度が異常なら、その補正に間違いが含まれているなら、天気予報に大きな影響を及ぼすのです。


何のためのデータ?何のための補正?


観測ステーションがおかしい系の、もしくは観測データの補正に問題がある系の懐疑論は、天気予報についてすっぱり忘れてしまっているかのようです。


観測データがもともと何のために取られているのか?どのような目的で補正されているのか?


決して存在しない地球温暖化をでっち上げるためではありません。多くは天気予報をより正確にするためなのです。それについて考慮を払わない温暖化懐疑論者は、「温暖化ばか」と呼ばれても仕方ないと思います。


え、nytola さんが温暖化ばかか?


そんなことはないと思いますよ。彼はこのあたりの事情を全て把握した上で、あえてあの記事を書かれているに違いありません。頭のいい人ですからね。


ちょっと続きます。あ、PDO についても書かなきゃね。