日経新聞に京の次の世代の

スパコンに関する記事が出ていました。


「京」の100倍速…次世代スパコン、日本に遅れ -- 日経新聞電子版
http://www.nikkei.com/tech/ssbiz/article/g=96958A9C93819595E0E1E2E2958DE0E1E2E0E0E2E3E08AEBE2E2E2E2;dg=1;p=9694E0E7E2E7E0E2E3E3E7E1EAE6



医療や防災などの最先端研究分野で、引っ張りだこになっている理化学研究所などの世界最速スーパーコンピューター「京」。計算機開発や利用に携わる世界の研究者の間では、その「京」より100倍以上速い次世代の「エクサコンピューター」の実現に関心が集まっている。しかし、日本の取り組みは遅れており、政策面でも技術面でも課題は山積している。


ということで、欧米や中国ではエクサフロップス (10^18 flops, 一秒間に 100 京回) の演算性能を持つスパコンに向けた動きがあるのだけど、日本では事業仕分けからはじまる政治の無理解によって関係者のやる気がそがれている、と、日本におけるハイパフォーマンスコンピューティングの遅滞について警鐘を鳴らす記事です。


ふむふむ、と読み進めていてずっこけました。「京」よりも早い「エクサコンピュータ」が必要な理由に、地球温暖化がだしに使われていたからです。いえ、だしに使っても良いのですが、もうちょっと何とかしようよ。



技術面でもブレークスルーが必要だ。例えば日本が得意とする気候分野のシミュレーション(模擬実験)。大気中の二酸化炭素濃度は増加の一途をたどっており、温室効果に起因する気温上昇が予測されていた。しかし21世紀に入ってから、気温はほぼ横ばいだ。予測はほとんど外れているといえる。


おいおい。温暖化なんて 10 年くらい見ていてもいろいろな変動が重なっていて見にくいから、それで外れてるっていっちゃったらだめでしょう。確かに最高はまだ更新されていないかもしれないけど、暑い年は着実に増えているわけで。*1


池辺さんは以前もあれれと思うことをおっしゃっていて、このブログで取り上げたことがあります。*2 また、以前に学術会議が温暖化懐疑論関係のシンポジウムを開いたことがありましたが、そこでも客席から微妙に懐疑論な発言をなさっていました。


だからかな。こんな記事になっちゃったのは。


そのほかの気候関係のコメントについてはまあ悪いとは思いませんが、でも、記事全体を眺めてみると奇妙にねじくれた印象を受けました。


「技術面でもブレークスルー」と言ったときに、エクサコンピュータとして取り上げるべきことはいろいろとあるんですけどねぇ。何百万にもなるであろうコア間の通信をどうするのか、とか、省電力はどうするか、とか、多数のプロセッサがあると常にどこかでおこる故障をどうするか、とか、計算機科学的に重要なことがいっぱいあるわけで、*3 そちらをクローズアップした方が良かったのじゃないかなぁ。

*1:たとえば、気象庁のこちらのページ
http://www.data.kishou.go.jp/climate/cpdinfo/temp/an_wld.html

*2:もう池辺さんの書かれた元記事はたどれなくなっていますが、こちらで取り上げました
http://d.hatena.ne.jp/onkimo/20100410

*3:あと、費用も大事だとおもいます。