先の記事の続きです。

できの悪い記事だったので、追記が必要になってしまいました。とほほ。


私の書いた記事に、東大の先生だから信じるのか、という趣旨のコメントがありました。


おっしゃりたいことはなんとなくわかるのです。ですが、私は、東大の物理学者で評判の良い一般向けの著書があるからこそ、村山先生を選んだ産経の選択は適切だった、ということを強調したい。適切だから、産経を批判するべきではない、と。


産経の記事は、そして産経に限らず今回のニュートリノに関する新聞報道の多くは、科学報道の一般的なフォーマットに従っています。新しい科学的な知見について、発表した研究機関を明記し、その意義を (たぶん、研究機関のプレスリリースを参考に) 短く解説し、最後に第三者的な立場の専門家の、いわゆる識者のコメントを載せる。


新聞記事は短く、詳しい説明はできません。ですから、何らかの方法で記事の信頼性を保証、つまり、オーソライズする必要があります。その一つが知見の発表者自身の情報、もう一つは識者のコメントになります。


識者のコメントは、コメントの内容も大事ですが、もっと大事なのはその見かけ、つまり、識者の名前と、その肩書きです。そう考えると、東大の先生である村山さんは本当に適切です。さらに、「宇宙は何から出来ているのか」を読んだことのある人も少なくないでしょうから、この観点からも適切。


ですから、村山さんはこの記事をオーソライズするために、ベストの選択だったと思います。なにせ、相対論・宇宙論についての、最高のオーソリティの一人なのですから。


ところで、コメントする識者の選択は新聞の科学部の能力に左右されます。産経はこれまでにも膝の力が抜けるような困った選択をたびたびしてきました。たとえば、環境問題記事のコメントに武田邦彦さんとか orz


でも、今回に関して言えば、村山さんを選んだ時点で、産経新聞はすくなくとも識者のコメントに関しては合格レベル。コメントを歪曲してさえいなければ、非難されるいわれはないでしょう。*1


記事に載っているのが村山さんのコメントではなく、武田邦彦中部大学教授さんの「これで相対論は終わった、発見したのは名古屋大、東大の物理学者は科学する心を持っていなかった、誠実が一番」みたいなコメントとか、池田信夫上武大学教授さんの、今回の件にどう関係するのかわからない微妙な科学史に関するうんちくだらけのとばし気味のコメントなら、産経をぶったたいてもかまわないでしょう。そうだったらおもしろかったのにね。


非難すべき瑕疵がないにもかかわらず産経を非難することは、産経の悪しきところまで自分を堕とす行為だと思います。


いえ、自信を持って瑕疵があると言える場合は非難してもかまわないですけどね。


どうぞ、お気をつけあれ。<9/26 追記> 日経も "現代の理論物理がよって立つアインシュタインの理論を覆す大変な結果で、本当ならタイムマシンも可能になる。" というコメントを掲載しています。

http://www.nikkei.com/news/headline/related-article/g=96958A9C93819695E0E1E2E0E58DE0E1E2EBE0E2E3E39180EAE2E2E2;bm=96958A9C93819499E0E1E2E3E18DE0E1E2EBE0E2E3E3E2E2E2E2E2E2

産経よりも長いコメントではありますが、産経の切り取り方が歪曲に当たるとは私には思えません。


産経記事にはちょっと首をかしげるところもありますが、村山さんのコメントに関する限り、問題ないと思います。ですから、山本さんの記事のあの部分は勇み足だと思うのです。<9/26 追記> 2カ所、手を入れました。

*1:歪曲したという証拠が見つかれば、私も考えを変えます。